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イラストレーター 吉井 宏氏 インタビュー

2008年6月13日

吉井宏

吉井 宏
Hiroshi Yoshii
愛知県生まれ。名古屋のデザイン事務所でグラフィックデザイナーとして勤務を経て 1990年イラストレーターとして独立、上京。1992年にコンピュータを導入。雑誌、書籍向けのイラストやキャラクター制作を中心に活動。無形の概念などをキャラクターで表現することを得意とする。2004年頃から3DCGによる制作に移行、アニメーションにも力を入れている。最近はフィギュア制作にも取り組んでいる。「タブレット& PainterClassicで絵を描こう」(IDGジャパン)など5冊の著書がある。

URL: http://www.yoshii.com/

コンピュータを利用し、独自の世界を表現しているイラストレーターの吉井宏氏。吉井氏のブログサイトでは、ほぼ毎日オリジナル3DCGキャラクターが公開されています。今回は、吉井宏氏に3DCGを活用したキャラクターデザインの制作活動についてお聞きいたしました。

Lux:アートはどこで勉強されたのでしょうか。吉井さんの簡単な経歴をお聞かせいただけますか?

Yoshii:高校1年のときにスターウォーズを観て、SFビジュアルの虜になりました。それがきっかけでイラストレーターになりたいと考えるようになり、専門学校でグラフィックデザインを学びました。デザイン会社で働いた後、1990年からフリーランスのイラストレーターになりました。1992年から制作環境をデジタルに移行しました。1994年頃から2003年頃まで、イラストの仕事と平行してPainterに関する本を5冊とたくさんの記事を書きました。2004年頃に3Dに移行、2005年頃からアニメーションを始めました。

Lux:影響を受けたアーティストや作品がありましたらお聞かせください。

Yoshii:スターウォーズをきっかけにSFアーティストたちにあこがれ、その後、ウォルフガング・フッター(Wolfgang Hutter)やクロード・ベルランド(Claude Verlinde)に大きな影響を受けました。

Lux:主にどのような分野のお仕事をされているのかお聞かせください。

アートトイの制作風景
アートトイの制作風景

Yoshii:数年前までは雑誌や書籍などのイラストレーションが主な仕事でしたが、最近はキャラクターデザインとアニメーション制作をする機会が多くなってきました。また、アーティストとしての活動も始めています。現在は少量生産のアートトイを作って売っています。

Lux:吉井さんのホームページにはたくさんの素敵なキャラクターが公開されていますが、制作されたキャラクターの中で特にお気に入りのキャラクターがありましたら教えていただけますか?

TV-Dog
TV-Dog

Yoshii:
TV-Dog 絵具で描いていた頃から、形を変えながら作りなおしてきたキャラクターです。少し異なるバージョンがフランスの会社にキャラクターとして使われています。

Pu-chan
Pu-chan

Pu-chan こちらも数回作りなおしてきています。TV-Dogとともに、アニメーションにしたこともあります。

クマ

この2つのキャラクターは、CGモデルの立体出力を試す記事の絡みでCINEMA4DとZBrushをそれぞれ併用しました。でも、ポリゴン・UV編集作業の大部分とレンダリングにはmodoを使用しました。
それから、Olympusのために制作した3本のショートアニメに登場するクマ。彼の声は僕が担当しました。モデリングからテクスチャペイントまでmodoを使用、アニメーションは3ds Maxで作成しました。

Lux:キャラクターを制作するとき、そのキャラクターの性格や個性などを考えながら制作しているのでしょうか。

Yoshii:設定を決めてから作るのではなく、作り始めてから「こいつはこういうやつだ」という性格や個性が浮かび上がってきます。大半はスケッチの状態でおおよそ決まってますけどね。

Lux:毎日新しいキャラクターを作り続けてブログで公開されていらっしゃいますが、毎日作品を作り続けている理由をお聞かせください。

Yoshii: TDW(The Daily Work)は、9年間続けていて1600以上作っています(1671体 2008年6月14日現在)。初期の頃は二次元でしたが最近は三次元モデルで作成しています。毎日作り続けているのは、制作を休んでしまうとその日に誕生するはずだったキャラクターが産まれていない事が、凄くもったいなく感じてしまうからです。一日3時間ぐらいTDWの制作に使うことで、産まれてくるキャラクターがいるのです。たぶん、いつか飽きたら止めると思うのですが、まだまだ飽きないので作り続けています。

Lux:二次元の制作から三次元の制作へ切り替えていくときに苦労されたことはありましたか。また、いままでに使用されてきたソフトウェアについてお聞かせください。

Yoshii:僕はもともと三次元として考えたものを二次元に落とし込むように絵を描いてきました。陰影を描いてモノのボリュームを表現するのは好きですが、絵具で描いていた時代も含めて25年くらい続けてきて飽きてしまいました。陰影描写に時間を取られすぎるのです。それよりも、形と色を作るのにもっと時間を使いたいと考えていました。3DソフトはRay Dream DesignerやLightWave 3Dなどいくつか買ってみましたが、使いこなすところまで行けませんでした。
2000年にZBrushを使い始めました。ポリゴンをほとんど意識しないで粘土のように形を作れました。イラストの仕事もPainterからZBrushに移行しました。ZBrushは複雑な形状を素早く作ることができますが、シンプルな形状を作るのには普通のポリゴンモデラーのほうが向いていると感じました。それで、2002年頃から本格的にCINEMA4Dを使いはじめましたが、2005年春にmodoを購入し、モデリングに活用。201以降はアニメーション以外の作業はほとんどmodoで行うようになりました。

Lux:コンピューターは吉井さんの創作活動にどのように影響したのでしょうか?

Yoshii:考えたものを早く見たい気持ちが強く、制作時間が長い絵具は苦痛でした。コンピュータでは考えたものがすぐ形にできるのは素晴らしい。

Lux:主に仕事で使われているコンピュータの構成をお聞かせください。

Yoshii:メインマシンとして使っているのは17インチのMacBook ProとMouse ComputerのCore2Quadマシンです。TDWも含めて、ほとんどの仕事を23インチのCinema Displayを接続したMacBook Proでやっています。Core2QuadのPCは主に3ds Maxでのアニメーション制作とmodoのレンダリングを行うのに使っています。マウスは使わず、タブレットのみで操作しています。液晶タブレットCintiqも使っています。

Lux:1体のキャラクタの平均的な制作時間とmodoの作業フローをお聞かせください。

モデリングからレンダリングまでの制作過程を速送りで収録したムービー
モデリングからレンダリングまでの
制作過程を速送りで収録したムービー

Yoshii:仕事でキャラクターを作るときは何日もかかりますが、好き勝手に作っていいTDWではレンダリングも含めて1点あたり2〜4時間程度です。キャラクターのアイディアのストックが数千点あります。眺めていると気に入ったものができてきます。彼らの誰かから「お呼び」がかかったら、それをmodoでモデリングします。 たいてい最初にキューブを作成し、1〜2回サブディバイドしてから各部を作っていきます。ほとんどの場合、一体型モデルとして作ります。まあ、制作過程ムービーでやっている手順どおりです。

Lux:吉井さんにとってmodoの魅力はなんでしょうか。

モデリングからレンダリングまでの制作過程を速送りで収録したムービー
モデリングからレンダリングまでの
制作過程を速送りで収録したムービー

Yoshii:ポリゴンモデリングに無駄な手間がかからず、作業が非常に速い。UV編集の簡単さ。テクスチャペイントも含めて左右対称の機能が強力。レンダリングの質と速さ。便利なスクリプトがたくさんあること。

Lux:将来のmodoに期待する機能がありましたらお聞かせください。

Yoshii:強力なキャラクターアニメーション機能。CATに匹敵するような、使いやすいプリセットのリグがあると素晴らしいです。そしたら僕は仕事のほとんどをmodoだけでおこなえるようになります。

Lux:本日は、どうもありがとうございました。